このように収縮に気を付けていても、ワイシャツの場合、3〜4回目の洗濯までは、衿で約半インチ(1.3センチ)、カラーで1/8インチ(0.3センチ)程度縮むことがあります。したがって、仕立てた後の洗濯で縮むことを見越して、最初から少し大きめに仕立てておくことが大切です。カラーやカフスの芯に使用する洋ざらしの芯地は、1着分だけ購入する場合は別ですが、多く仕立てるために数ヤール購入する場合は、すべてを水に浸して乾かし、その後に幅出しを行います。例えば、幅36インチ(91センチ)の洋ざらしは乾かすと幅が約3インチ(7.5センチ)縮みます。布が乾いた状態で、布の両端に両手の指をかけ、縮んだ量の半分程度、つまりこの場合は約1インチ半(4センチ)を引き出します。そして、霧を吹きかけて布目を整えながらアイロンをかけると、仕上がり幅が34インチ(86センチ)になります。このように幅出しと地のしを終えた芯地と、地のし済みの表地を合わせてワイシャツを仕上げると、その後何度洗濯してもカラーやカフスの芯だけが縮み、表地が余ってシワができるといった問題が起こりません。ネックバンドや前立てに使用するキャラコの芯は、一般的に木綿と同じく地のしをし、幅出しは不要です。芯地の幅出しをする理由は、表地と芯地の洗濯による収縮率を合わせるためです。これを怠ると、芯地が縮んで表地が余り、不格好なカラーやカフスになります。特にハード仕上げのカラーや、ドレスシャツの胸用に使用する20ポンドの厚地洋ざらしで芯地の幅出しをしないと、糊付け仕上げの際に表地が余ってきれいな仕上げになりません。レジャー・ジャケット用のダック芯も幅出しは不要ですが、木綿と同様に地のしをした方が良いでしょう。このように、表地と芯地の地のしはとても重要です。
水通し・湯通しを行う際には、生地を適切に「歪みの修正」「縮ませる」「色落ちさせる」「風合いを整える」ため、正確な手順で進めることが重要です。まず、水通し・湯通しの準備をします。
事前準備: 生地が小さい場合は最初に1~2の工程で下準備をします。
1.生地を水通しがしやすい大きさに裁断します。
2.ほつれを防ぐため、布端の処理を行います。
水通し・湯通しの手順に移ります。
3. 広めの洗面器やたらい、バケツ、バスタブなどに水を張ります
(湯通しの場合は、37度〜45度程度の温度に調整します)。
4. 生地を蛇腹状に折りたたみ、水またはお湯に一定時間浸けます。
5.時間が経過したら、生地を軽く脱水し、陰干しします(生地の形状を損なわないよう、脱水時には強い力を加えないことが重要です)。
水通し・湯通しが完了したら、生地が適切に縮んでいるか、色落ちが発生していないかを確認し、乾燥後には風合いのチェックも行いましょう。このように、適切な方法で水通し・湯通しを行うことで、生地の仕上がりを最適化することが可能となります。
準備:
・アイロン台や厚手のタオルを用意します。
・アイロンの温度は生地に合わせて設定します(一般的に中温~高温)
手順:
・生地を広げ、シワを手で伸ばします。
・生地の裏側からアイロンをかけます。
・アイロンは生地に沿って、縦方向に動かします。強く押さえすぎず、軽くすべらせるようにかけます。
・蒸気を使用する場合は、生地が濡れすぎないよう注意します。
・折り目をつけたい部分は、しっかりと押さえてアイロンをかけます。
・生地全体に均一にアイロンをかけ、シワを伸ばします。
注意点:
・生地の種類によってアイロンの温度や方法が異なるので、事前に確認してください。
・絹や繊細な生地は、当て布を使用してアイロンをかけます。
・アイロンを一か所に長く当てすぎないよう注意します。
生地の種類別アイロン温度
・綿: 中温 (150〜180℃)
・麻: 低温 (120〜150℃)
・絹: 低温 (100〜130℃)
・ウール: 低温 (100〜130℃)
・ポリエステル: 高温 (180〜200℃)
地直し(じなおし):
織物や布地を裁断する前に、生地を伸ばして歪みを取る作業です。これにより、生地が均一になり、型紙に合わせた裁断がしやすくなります。特に、縫製時に生地が歪むのを防ぐために重要な工程です。
地のし(じのし):
「地のし」は現在では和装の専門用語で、絹やウールなどの素材で行われる処理で、主に生地の表面を整理したり、形を整えたりすることを指します。生地を水に浸してから干したり、蒸したりすることで、繊維の縮みを防ぎ、扱いやすくするための処理です。
地のし は、主に縮みを防ぎ、風合いを整えることを目的としていますが、同時に生地の歪みをある程度整える効果も期待できます。水通しやアイロンがけによって生地全体が均一に伸び縮みし、歪みが軽減されるのです。しかし、地直し は、地のしよりもさらに重点的に歪みを整える作業であり、特に幅広の生地や反物に対して行われます。横糸を抜くことで、生地の幅を調整し、真っ直ぐに裁断しやすくします。
湯通し・水通しが必要な生地
・麻素材
・綿素材
・ガーゼ・ダブルガーゼ生地
・シーチング生地
・キルティング生地
・インディゴカラーの生地
・その他後染めの生地
湯通し・水通しが不要な生地
・ポリエステル生地
・ナイロン生地
・アクリル生地
・ウール素材
・皮革素材
・絨毛素材
・シルク素材
・縮まない性質のある生地
・傷む可能性のある生地
裁断
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粗裁(あらだち)
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布の裁断