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地のし / 地直し
「地のし」とは、生地の縦糸と横糸を正しい位置に戻し、元の状態に直す作業を指します。このプロセスは、生地の歪みを修正し、適切な形状と寸法を回復させることを目的としています。特に「織りの甘い生地」や動物性天然繊維(ウール、カシミヤ、アンゴラ、シルクなど)、植物性天然繊維(綿など)は、製造や保管の過程で歪んだり縮んだりするため「地のし」が必要です。この作業は、裁断や縫製の前に行われ、最終的な仕上がりの品質を向上させる重要な工程です。 
またプロセスが似ている「地直し」との違いにも説明します。
1. 地のし(現代語訳)
下着類は、すべて初めて使うときには洗濯する必要があります。洗濯をすると生地が必ず収縮し、寸法が変わってしまいます。特に木綿、麻、人絹などの生地は収縮量が大きく、通常、ワイシャツや下着類は新品でも洗濯と糊づけ仕上げをしてから商品化されるのが一般的です。戦後は新品を洗濯することが少なくなりましたが、それは良心的な製品とは言えません。ただし、純綿製品や防縮加工を施した生地(例えばサンフォライズ仕上げ)については例外です。そのため、注文により1枚仕立てのものや自家製品は、必ず仕立てる前に生地の地のしが必要です。 
木綿や麻の生地は水に浸した後、一度乾かしてから霧を吹きかけてアイロン仕上げをします。純綿や木綿の生地でもブロード・クロスのように艶出し仕上げが施されたものは、商品としてお客様に渡す際に地のしをすると艶が消えてしまうため、これを嫌う方もいます。その場合は、袖やカラー、カフス布のみ地のしを行います。また、絹やその他の化繊糸が少ない生地もワイシャツの場合、袖やカラー、カフスの部分には地のしが必要です。木綿や麻のワイシャツの場合、1着分の生地(約3ヤール)につき、12〜3センチは余裕を持たせる必要があります。木綿は約20センチ、絹は7〜8センチほど縮みます。人絹類は一般的に木綿と同様と考えてよいでしょう。フランネルは綿の混紡率によって縮み方が異なり、純毛に近いほど縮みます。その収縮量は最低12〜3センチから最高25センチに達することがあります。 洋服地用の毛織物は全体に霧を吹いてからたたみ、1時間ほど置いた後にアイロンをかけ、衿の曲がりなどを丁寧に直すことが重要です。 

このように収縮に気を付けていても、ワイシャツの場合、3〜4回目の洗濯までは、衿で約半インチ(1.3センチ)、カラーで1/8インチ(0.3センチ)程度縮むことがあります。したがって、仕立てた後の洗濯で縮むことを見越して、最初から少し大きめに仕立てておくことが大切です。カラーやカフスの芯に使用する洋ざらしの芯地は、1着分だけ購入する場合は別ですが、多く仕立てるために数ヤール購入する場合は、すべてを水に浸して乾かし、その後に幅出しを行います。例えば、幅36インチ(91センチ)の洋ざらしは乾かすと幅が約3インチ(7.5センチ)縮みます。布が乾いた状態で、布の両端に両手の指をかけ、縮んだ量の半分程度、つまりこの場合は約1インチ半(4センチ)を引き出します。そして、霧を吹きかけて布目を整えながらアイロンをかけると、仕上がり幅が34インチ(86センチ)になります。このように幅出しと地のしを終えた芯地と、地のし済みの表地を合わせてワイシャツを仕上げると、その後何度洗濯してもカラーやカフスの芯だけが縮み、表地が余ってシワができるといった問題が起こりません。ネックバンドや前立てに使用するキャラコの芯は、一般的に木綿と同じく地のしをし、幅出しは不要です。芯地の幅出しをする理由は、表地と芯地の洗濯による収縮率を合わせるためです。これを怠ると、芯地が縮んで表地が余り、不格好なカラーやカフスになります。特にハード仕上げのカラーや、ドレスシャツの胸用に使用する20ポンドの厚地洋ざらしで芯地の幅出しをしないと、糊付け仕上げの際に表地が余ってきれいな仕上げになりません。レジャー・ジャケット用のダック芯も幅出しは不要ですが、木綿と同様に地のしをした方が良いでしょう。このように、表地と芯地の地のしはとても重要です。

2. 地のしとは?
「地のし」という言葉は、現在では主に着物関連で使われることが多いですが、洋服の仕立てにおいても非常に重要な工程です。地のしとは、生地を水や湯に浸して縮ませ、その後乾燥させて元の寸法に戻す作業を指します。これにより、布の収縮率を均一化し、仕立てた後の縮みを防ぐことができます。 
特にワイシャツでは、生洗濯による予期せぬ縮みを防ぐため、最初に生地を縮ませておくことが重要です。例えば、衿は3〜4回の洗濯で約1.3cm、カラーは約0.3cm縮むため、仕立ての段階でこれを考慮しておく必要があります。
また、シャツの襟やカフスに使用される芯地も地のしを行うことで、表地との収縮率を一致させることができます。これを怠ると、芯地だけが縮み、表地が余って不格好な仕上がりになる可能性があります。具体的には、洋ざらしの芯地は水に浸し乾燥後に幅出しを行い、キャラコやダック芯については幅出しは不要ですが、地のしを行うことが推奨されます。全体として、地のしは、洗濯後も製品の形状や品質を保つために欠かせない工程であり、特にハード仕上げのカラーや厚地の芯地を使用する場合にその重要性が増します。
生地の特性や用途に応じて、適切な地のしを行うことが、洋服の仕立てにおいて重要なポイントとなります。
3.  水通し・湯通し

水通し・湯通しを行う際には、生地を適切に「歪みの修正」「縮ませる」「色落ちさせる」「風合いを整える」ため、正確な手順で進めることが重要です。まず、水通し・湯通しの準備をします。

事前準備: 生地が小さい場合は最初に1~2の工程で下準備をします。
1.生地を水通しがしやすい大きさに裁断します。
2.ほつれを防ぐため、布端の処理を行います。

水通し・湯通しの手順に移ります。
3. 広めの洗面器やたらい、バケツ、バスタブなどに水を張ります
(湯通しの場合は、37度〜45度程度の温度に調整します)。
4. 生地を蛇腹状に折りたたみ、水またはお湯に一定時間浸けます。
5.時間が経過したら、生地を軽く脱水し、陰干しします(生地の形状を損なわないよう、脱水時には強い力を加えないことが重要です)。

水通し・湯通しが完了したら、生地が適切に縮んでいるか、色落ちが発生していないかを確認し、乾燥後には風合いのチェックも行いましょう。このように、適切な方法で水通し・湯通しを行うことで、生地の仕上がりを最適化することが可能となります。

4.  アイロンがけ

準備:
・アイロン台や厚手のタオルを用意します。
・アイロンの温度は生地に合わせて設定します(一般的に中温~高温)

手順:
・生地を広げ、シワを手で伸ばします。
・生地の裏側からアイロンをかけます。
・アイロンは生地に沿って、縦方向に動かします。強く押さえすぎず、軽くすべらせるようにかけます。
・蒸気を使用する場合は、生地が濡れすぎないよう注意します。
・折り目をつけたい部分は、しっかりと押さえてアイロンをかけます。
・生地全体に均一にアイロンをかけ、シワを伸ばします。

注意点:
・生地の種類によってアイロンの温度や方法が異なるので、事前に確認してください。
・絹や繊細な生地は、当て布を使用してアイロンをかけます。
・アイロンを一か所に長く当てすぎないよう注意します。

生地の種類別アイロン温度
・綿: 中温 (150〜180℃)
・麻: 低温 (120〜150℃)
・絹: 低温 (100〜130℃)
・ウール: 低温 (100〜130℃)
・ポリエステル: 高温 (180〜200℃)

2. 地直しと地のしの違いについて 

地直し(じなおし):
織物や布地を裁断する前に、生地を伸ばして歪みを取る作業です。これにより、生地が均一になり、型紙に合わせた裁断がしやすくなります。特に、縫製時に生地が歪むのを防ぐために重要な工程です。

地のし(じのし):
「地のし」は現在では和装の専門用語で、絹やウールなどの素材で行われる処理で、主に生地の表面を整理したり、形を整えたりすることを指します。生地を水に浸してから干したり、蒸したりすることで、繊維の縮みを防ぎ、扱いやすくするための処理です。

地のし は、主に縮みを防ぎ、風合いを整えることを目的としていますが、同時に生地の歪みをある程度整える効果も期待できます。水通しやアイロンがけによって生地全体が均一に伸び縮みし、歪みが軽減されるのです。しかし、地直し は、地のしよりもさらに重点的に歪みを整える作業であり、特に幅広の生地や反物に対して行われます。横糸を抜くことで、生地の幅を調整し、真っ直ぐに裁断しやすくします。

地直し
生地の歪みを確認するためには、横糸を引き抜いて、その状態をチェックすることが重要です。 
生地の横糸とは、織物の構造を成す糸のうち、布の幅に沿って水平に織り込まれている糸のことです。織物は縦糸(たていと、英: warp)と横糸(よこいと、英: weftまたはwoof)の交差で作られています。横糸は、織物の幅方向に走り、縦糸の間を左右に通されて織られています。このため、横糸は生地の構造を補強し、強度を増し、またデザインやパターンにも影響を与えます。横糸を引き抜くことで、生地が織られた際に縦糸と横糸が正確に直角に交わっているかを確認できます。生地が歪んでいると、横糸が一直線に並ばず、糸を引き抜く際にまっすぐではなく波打ったりすることがあります。この方法で、生地の平行性や織り目の整合性をチェックすることができます。 
生地の地のしを行う前に、まずは生地がどの程度歪んでいるかを確認しましょう。歪みを確認する方法として、横糸を引き抜く方法があります。これは、生地の端から1本の横糸を見つけて、端から端まで慎重に引き抜くことで行います。糸をまっすぐに引き抜くことで、糸の抜け具合を確認し、生地がどれだけ歪んでいるかをチェックします。もし糸がまっすぐに抜けない場合は、生地が歪んでいる可能性があります。なお、ツイル生地など、横糸が簡単に抜けない生地の場合は、目視で歪みを確認する必要があります。この場合、生地全体を見て、織り目がまっすぐであるか、歪んでいるかを判断します。 
生地の歪みが確認できたら、手で直すかアイロンを使って直すかのいずれかの方法で地のしを行います。手で直す場合は、生地に霧吹きで水を吹きかけ、両端の耳(縦方向のライン)を持ちながら、生地の「目」を見て整えます。アイロンで直す場合は生地にスチームをかけた後、アイロンを縦方向と横方向に動かして歪みを直します。ただし、斜めに動かすのは避けてください。特にウールやカシミアなどの獣毛素材の場合は、スチームと当て布を使用し、その上からアイロンをかけることが推奨されます。 
シャツの多くに使われている綿などの風合いが変わりにくい素材の生地の場合、地のしの際に湯通し・水通しを行うことがあります。これにより、素材の収縮を防ぎ、風合いを保つことができます。湯通し・水通しの詳細については次の項目で解説します。 
すべての生地を湯通し・水通しする必要はありません。むしろ高級素材の中には水に浸けてしまうことで傷んでしまう生地もあるため湯通し・水通しをする前に生地の性質を確認しましょう。 

湯通し・水通しが必要な生地
・麻素材
・綿素材
・ガーゼ・ダブルガーゼ生地
・シーチング生地
・キルティング生地
・インディゴカラーの生地
・その他後染めの生地

湯通し・水通しが不要な生地
・ポリエステル生地
・ナイロン生地
・アクリル生地
・ウール素材
・皮革素材
・絨毛素材
・シルク素材
・縮まない性質のある生地
・傷む可能性のある生地

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