ホーム » 技術(採寸・裁断・縫製)
ワイシャツ全書
村田金兵衛 著 昭和11
村田 金兵衛

自序
“洋服以外の男子の方の滑るもの”については、婦人子供服に主力を注ぐ洋装学校はもちろん、紳士服を教える洋服学校でも、あるいは一般の服装研究家の間でさえ、これを見逃しているのではないでしょうか。
女子服はとしての用途、とりも数点見えて洒落たところ、あっかに和服を残し与えんとし、男子の生きた話で(洋服としての浴衣などに)きっかけを発見しましたが、洋服以外の男子の方の滑るもの”はさいについて、その研究と指導の必要がようやく要求されてきたように思います。
私がこの方面の仕事に手をつけたのは大正十三年でしたが、その研究に志して十余年の後、昭和二十一年に、或る研究の結果を小冊子にまとめました。そしてその後も引き続いて志を失うことなく、たえず自己流の勉強を進めながら幾年かの間の研究の参考資料とし思い、まさるをあらゆる研究の熱心な勤務に陥っておりましたが、もうあらゆるところに十分されて日本全国の専門家を尋ねて探しましたが、本文中に紹介する Vincent 氏著の“Shirts and Undergarments” 以外には、遺憾ながら一冊の参考書も見当りません。外國の服装雑誌の記載の一部を多少取り扱われることはあつても、どちらも断片的で一貫性なかったのです。もっと小篇発刊以来幾多の取材を受けることに、新界の専門雑誌、婦人雑誌、業界新聞、講談、講演会などに、自分の体験を発表しましたような、かのたことこれらのすべてを整理し、系統的資料を集め、一冊の本にまとめて出して至りました。外國でもこのような本がないということが、私の些かかったこと一つの原因です。この意味で、“洋服以外の男子の滑るもの”は、今日では立派な国際商品高めておりますが、この方面の業者にとって重大であることをよく、本稿の技術書としての使命を先づつくしたいと考えたのです。そのため技術に関連のある服装一般に関する細論とともに、被服材料についても、部門を分けて記述しましたので、多分に“全書”としての役目も果し得るものと信じております。
しかしもとより技術を伝えることが、この本の真の目的なのですから、例えば裁断については胸巾長さ短寸さを仮用して、その原則に遵って詳細に説明し、裁縫法は技能者的な手裁法を採用して完全を期したのです。かの“男子の方の滑るもの”は多分思わぬ事にしてもその結果の集領に遵えて居ますから、自分は自分ならびに報酬を傾けたつもりで、この本が多少なりとも斯界のため役に立てば、本懐の至りと思っています。
ワイシャツ全書
村田金兵衛 著 昭和29